【前編】テンペラと私の原点──祈りを描くということ

【前編】テンペラと私の原点──祈りを描くということ

今、私はテンペラ技法を使って、神仏の姿を描いています。

この技法には以前から強く惹かれていましたが、身につけるには時間がかかることもわかっていたため、

特にイラストレーターとして多忙だった頃には、とても学ぶ余裕はありませんでした。

けれど、振り返ってみれば、その源はずっと昔── 10代の頃に初めて出会った、西洋の宗教画にあります。

金箔が施された荘厳な聖母子像。


静謐なまなざしと、深く祈るような画面構成。

高校生だった私は、その静かな強さに、言葉を失いました。

あのとき心に宿った「いつか私も、こんな絵が描けたら」──
その想いは、長い時を経てもなお、奥底で灯り続けていたのです。

オラクルカード制作の終わりと、時代の変化

長く、オラクルカードの制作に携わってきました。
自分の絵が、誰かの日常の支えになることに、大きな喜びがありました。

けれど、あるときから、その役目は一つ終わったのだと感じるようになりました。


40枚以上の絵柄を“イラストレーターとして描き分ける”日々から、 一枚の絵とじっくり向き合いたい──


そんな静かな想いが、心の奥に芽生えはじめていたのです。

ちょうどその頃、AIによる画像生成も急速に広まりはじめました。

誰でも「それらしく美しい絵」が作れる時代。
それは、オラクルカードの大量生産にも向いています。

けれど私は、時間をかけて「描くことそのもの」にこそ、
本当の意味や祈りが宿ると信じたかったのです。

 

次回は、私があえて古典的テンペラ技法を選び、どのように神仏を描いているのか── その背景と現在についてお話しします。

(後編へつづく)